小さな会社の情報資産の利用

デジタルトランスフォーメーション(DX)という新しいキーワードで、デジタル化による、既存のしくみや価値観を見直し、より良い方向へ変革しようとする考え方が叫ばれるようになりました。

「より良い方向へ変革」するということは、収益増大も意味するでしょうし、誠に喜ばしいことなのですが、「デジタル化」という言葉から、まとまった額の経費増加が匂うと思うと、どうも前向きに捉えにくかったりするもんです。

しかしです、まだしていない、まだ試していない、さほど経費を必要としない「既存のしくみや価値観を見直」す方法があるのなら、どんなもんでしょう。「既存のしくみや価値観」だけでなく、これまでの考え方を少し変えてみるのも、「より良い方向へ変革」する方法、あるいは、そのキッカケとなってくれるかもしれません。小さな会社だから・・・と考えてなされていないことの中には、するというだけで、想像以上の効果が生まれることがあります。

Excelをデータベースとして使う

社員10名ほどのある会社では、請求書と伝票発行、会計に同じ会社の会計ソフトを使っていたこと、そして、小さな会社でも手軽に購入できる値段であったことというのが主な理由で弥生販売を売上管理用のアプリケーションとして利用しています。

請求明細が数行から十数行程度であれば、支払明細書、請求明細書という紙を見比べながらの照合確認は無理なくできていたのですが、取引先数が数店から十数店と増え、請求明細行も数十以上となってくるにつれ、請求と支払明細の照合に思いの外時間がかかるようになってきていました。

小さな会社の常でありましょうが、代表者や他の社員が全ての職種業務の合間に支払チェックをするという兼任作業になります。総請求額と総支払額がピッタリであれば、何ら苦労はない訳ですが、違算額が、数千数百円から数万円となってくると、取引先別に請求明細をいちいち照合する必要が出てきます。「ダメダコリャ」と言いたくもなるのも無理はないのですが、支払をキッチリ頂戴しなくては商売とは言えません。口ではダメダとは言いながらも、キッチリ合わせるよう違算確認をしなければならず、のべ丸一日から、場合によると、丸二日間を支払照合のためだけに時間を費やすこととなっていました。

違算金額が多いのは、取引額や取引点数の多い、そこそこ大きな会社の明細であり、そういう会社は自社のためにではあるでしょうが、支払明細をCSVやExcelファイルで送ってきたり、ウェブ上からダウンロードできるようになっています。また、弥生販売の伝票明細一覧はExcelファイルで出力できるようになっています。幸い、当社のExcelは、バージョン2019であったので、既にあるExcelを使って、支払照合をするしくみを作ることとしました。

その会社の代表も含め、誰もExcelのピボットテーブルやPower Queryという機能を使ったことがなかった訳ですが、それらの使い方、仕組みの作り方を知ることで、結果として、全支払照合を数時間から半日程度で完了できるようになりました。

それだけで言えば、業務効率化ということですが、もっと大きな変化、変容は、Power Query、Power Pivotなどを使えるようになることで、得意先別、商品別、年月別、あるいは、利益額別の一覧が可能となり、多面的な見方が簡単にできるようになり、今後の望む方向、商品開発、価格設定など、必要な経営業務がより明確に思案実行できるようなったことにあったと言えます。

売上や利益額これこれしかじかを目標とする!などという、実務から浮いた机上の数値としてでなく、これこれしかじかの利益額のために、Aという商品の値上げをこうすべく、どの得意先と交渉し、次善策として、Bという商品を新たにどの得意先と商談、数量をこうし、単価をこのくらいに決定するよう努力する、なぜなら、商品Bは、こうしてああしてという点がこれらの得意先のメリットとなり得るだろうから・・・という具合に、代表を始め、全社員が同じ方向を目指し、それぞれの知恵を絞った、実務に根付いた企画立案、実行、そして、再検討も同じレベルで相談できるようになったという訳です。

Excelを道具とし、管理会計の考え方、商売のあり方を同時に学び、日常業務の中で、試行し、改良するというところが、当社の新たな道の進み方となったのです。

自社制作と運営による、自社所有のウェブサイト

「今更?」と言われそうですが、自社制作と運営による、自社のウェブサイトは持っていた方が良いでしょうというお話です。

社員10名の機械製造業者でのお話ですが、実は、ウェブサイト云々ということでなく、海外進出の後押しを主たる役務として関わらせて頂いたというのが始まりでした。初めての海外展開を目前とし、ウェブサイトも作り直し、できれば、簡単な英語と進出国の言語によるウェブサイトも制作しようという、付属的な業務としてウェブ再構築にも参画することになった次第です。

その時、その会社が持っていたのは、2000年以前に外部委託で制作してもらった、いささか古臭いウェブサイトでありました。ホームページ、会社案内、商品説明、問い合わせという具合の数ページのウェブサイトで、FAX番号など修正を必要とする部分が見受けられましたが、制作以後、何も再編集されていません。また、古くて、放置されていることが誰の目にも明らかであるからか、当ウェブから問い合わせが発生することは皆無。聞くところでは、作ってくれた人がいなくなったとのことでした。

社員10名の小さな会社ですが、当社は、創設時には特定業界の注目を浴びたという歴史があり、また、相応の技術的知見の蓄積を持っていました。しかしながら、成功体験からの脱却が遅れ、その時点で、当社の専門は業界内の陳腐化した技術と見なされていました。つまり、新規発注は激減、これまで出荷した機械のメインテナンス業務で何とか業態を維持しているという状況にありました。

そして、その状況が海外展開の大きな要因となりました。日本では陳腐化した技術でも、特定国では、新規技術であり、その導入を要望する企業があったのです。専門商社の協力もあり、初めての海外進出を、今まさに実現化するという時のことでした。

既に知る人は多くありますが、ウェブサイトは、Wordpressという無料配布のHMSを利用して、会社でも、個人でも、誰でも制作することができます。このウェブ自体、Wordpressで制作していますが、ドメインやレンタルサーバーなどが何のことか全くわからない人にとっては、とても難解な知識習得が必要のように思えるようです。ウェブ制作の専門業者には、いかにも、難解なコーディングなど駆使してそれはそれは見目麗しいウェブを制作するところがあり、高額なサービス料を必要とするところがありますが、小さな会社の法人サイトであれば、自社でレンタルサーバーを契約し、ドメインを所有して、Wordpressを使って、自社制作することで十分ですし、それは必要と言えると感じます。

自社でウェブ制作運営することを必要と考える最大の理由は、自社の都合で、好きなときに好きなようにコンテンツを編集できるということ、そして、自分で作るのですから、中身がどのようになっているかが分かるというところにあります。外部ウェブ制作代行者を利用するなら、当然なことですが、相手の都合との兼ね合いをはかることが必要です。金に糸目をつけないと言うなら、いつでも対応してくれるところがたくさんあるでしょうが、小さな会社の限られた経費の中で対応するということは、相応に対応が限定的になるということは予めから抑えて置かなければならないところです。

そんな自説を、その会社の代表はよしとしてくれたことから、新たにドメインを取得し、まずは日本語のサイト、数ヶ月遅れで簡単な英語のサイト、そして、続く数ヶ月後に、展開予定国の言語によるサイトを制作し、運営することとなりました。特に、当社は、陳腐化したと言われる技術であっても、当該技術の知見が豊富であったため、代表者の許しを得て、最大限、他社であれば外部には公開しない資料データなども、日本語サイトには全て盛り込むことに注力しました。

WordPressとそのテーマを利用することで、それなりのウェブサイトが完成した訳ですが、既述の通り、サブの、付属的な業務であり、サイト運営というより、サイト制作で役務は完遂のように捉えていました。その後、まず驚くこととなったは、英語サイトを公開して1ヶ月ほどで取得することになった、米国からの問い合わせです。

冒頭から、当該技術の機械製作者を探しあぐねていたこと、やっと出会えて感激していることから英文が記されています。最初の問い合わせから、数千万円相当の機械の見積もり依頼がなされており、読んだ瞬間は、よくある眉唾ものではないのか?とえらく警戒したものです。その後、幾度にも渡るメールの応答を繰り返し、発注のためには、当然、来日し、同等製品を目視確認する必要があること、取引条件はC&F 米国西海岸、L/C決済を希望することなどを理解することができ、どうやら本気であることを確認することができました。初めて海外展開しようとしている小さな会社が、初めて海外からの見積もりを依頼を受けることになったのでした。

さらに、日本の誰もが社名を知っている大企業からの問い合わせを得ることになります。その研究部部長という人から、当社技術を応用することについて、共同開発の機会を得たいという問い合わせです。こちらは当然日本語で綴られた文章なため、代表自らが、その後、直接応答することとなりますが、この会社の持つ「陳腐化」した技術がいかに宣伝不足であったのか、ウェブの見てくれはともかく、ウェブはやはり内容が読まれるものであることを痛感することになった訳です。

一緒に、ドメイン、レンタルサーバー契約、Wordpressの設定、編集などを行い、いくつかの画像編集の方法、そのためのアプリケーション利用方法などを知ることで、ウェブサイトを、誰でも公開し、運営することができます。ウェブ公開すれば、必ず吉報が来訪する・・とは断言できるものではありませんが、自分自身では想像できない出会いを得るキッカケにはなることがあると知ってほしいのです。

アイプロモティストが後押しできます

Excelにしても、Webにしても、新しい道具の新しい使い方を知り、使ってみる、ということが、想像以上の効果を発生させることがあるということを体験してきました。

十数年の海外赴任を通して、海外でも日本でも、簿記と言うと知ろうともしない若者が、Excelの関数と業務のための利用方法と言うと、ほとんどが知りたい、教えてほしいと希望すること、誰も知らない海外法人売却となれば、二束三文で売り払われるのが常識とされる中、ウェブを通して、時価売却を、2年未満で成約したこと、上記したような、デジタルの道具を使って出会った数々のキッカケとの出会いを、少しでも多くの方々に情報共有し、後押しと言う形で情報協働する機会を求めています。

半生をいろいろな中小企業勤務、経営の後押しとするアイプロモティストです。お気軽にご連絡ください。