プロモーティングということ

「promoting health」は「健康を促進する」と日本語訳するのに、「Health PROMOTING Goods」と言えば「健康用具」と言えばすむように、プロモーティングという言葉は、時に、日本語としては省略されてしまいます。アイプロモティストの活動、「VPDCAプロモーティングレッスン」や「Excel活用プロモーティングレッスン」も、「VPDCA教室」、「Excel活用教室」と称しても、何ら誤解が生じることはないというわけです。しかし、それではつまらんので、プロモーティングという言葉にこだわること、意味したいことをテーマに、少しここで記したいと思うのです。

後押しすることを意味したいプロモーティングという言葉

こちら↓でも記しましたが、元は、自分の活動に適した言葉を見つけようとする過程から、プロモーティングという言葉を再認識したという経緯があります。

かつて、勤めていた小企業が海外に工場を設立、初めて海外に勤務することになったことがあります。その十数年間の運営の中で、しばしば必要とされたのは、後押しでありました。製造業としては、カイゼンという発想が欠かせず、品質管理の手法、PDCAは当然、絶えず運営されるべきステップになりますが、各論OK総論NGというようなあり様を目の前にすると、そもそも、PDCAをなぜ行うのかという本質的な問いが自然に湧いてくるものです。既に慣れ親しんだ環境の中で想像するのとは異なり、初めての海外という環境では、ほとんど全てが新しいことであり、新しいモノゴトを組み合わせて、何事かをしようという時、モチベーションを支えてくれるのは、その何のためにという問いに対する回答と後押ししか見当たらないことがあります。

何のためにという問いに対する回答と後押しとは、私の場合、心理学者チクセントミハイ氏のフロー体験でいう、チャレンジとスキルのバランスのように、知情意がまとまることでの自己目的化、そして、日本語の朗読と読書でありました。何のためというのは目的は何か、どんなビジョンを持つのかということですが、それは難しい言葉で言い表すような抽象的なことではなく、日ごろの言葉でシンプルに言い現わせるものにこそ、本当の望みが含まれることに気づくことになりました。それは、日本語の朗読という後押しによるところが大きかったのだろうと感じています。悩みが深いほど、難解と思っていた本でもドンドン読むようになるのは不思議なことのひとつですが、倦厭されがちなアカデミックな本に記されている内容が、いろいろな体験のように感じられることで理解が深まるせいではないかと思っています。

ビジョンは?を知ろうとし、感じられるようになる後押しが日本語の朗読と読書であり、行いの中でそれを意識することで、ビジョンを目指す行動そのものが目的化してくるという体験は、フロー体験現象と言えるのではないかと思いますが、それと共に気付くのは、知るというだけでは不足で、感じられ、意識として根付かせることが、本当の納得と呼べるものであろうということです。肚に落ちるというのはそういうことを指しているのでしょう。

話はプロモーティングなのですが、人によって後押ししてくれるものは様々なものです。なので、「VPDCAプロモーティングレッスン」や「Excel活用プロモーティングレッスン」で少しでも後押しになってほしいと思うことは、VPDCAやExcel活用というのは、それを行う人が持つビジョンに近づくためのことなのだというを意識してもらえること、それに気づいてもらうということなわけです。VPDCAを回せるようになる、Excel活用できるようになるということは手段をより磨き上げる後押しなのでしょうが、それは、ビジョン実現という目的を目指すために必要なことと、もう少し上のトリさんの目も持てるようになるプロモーティングでありたいと願っています。

ウェルビーイングを目指すことを意味したいプロモーティングという言葉

ウェルビーイングという言葉が、社会福祉の分野だけでなく、ビジネスの世界でも言われるようになってきたのは、human-oriented、人主体の考え方が強調されるようになったことが背景となっているようです。世界保健機関の定義はともかくとして、英語Wikipediaを参考にさせて頂くと、ある人にとって、とても良い状態のことや自己利益になることを指すことが分かります。

ということは、それは、望む姿:ビジョン実現化の状態のことを言っていると捉えても良さそうです。やはり、独断と偏見によるものですが、チクセントミハイ先生のフローが活動における、動的な面に焦点を当てる精神的状態を言うのに対して、ウェルビーイングは、結果としての、比較的、静的な意味合いを持つように感じます。それは、ヴェトナムの禅僧、ティク・ナット・ハン先生が言う、喜びと幸福の違いを連想させるものです。

つまり砂漠を旅するものが、冷たい流れを発見したときに感じるのが「喜」であり、その水を飲んで体験するのが「幸福(楽)である」

「ブッダの<呼吸>の瞑想」

端折った解釈と言い方になりますが、ビジョンを実現させよう!得よう!として活動する無我夢中の状態が喜びであり、ビジョンが実現して、喜びが達成感となり、本当のこととして体験することが幸福というように例えることができるように感じます。現在進行形と現在完了形の違いとでも言えそうな違いを思うと、プロモーティングとは、ビジョンが実現化された時のウェルビーイングという状態を目指しながら、今、夢中になって進もうとする喜びを後押ししようとしているのだということに気づくことになります。

ヤルと決めたことをプロモーティングするという意味

これこれしかじかの3つです、という言い方が恰好良いので、もうひとつ、3つ目で最後の意味付けをしときたいと思います。

プロモーティングという言葉は、促進するという意味を持つ言葉です。促進するというのは、既にあることがなされている、あるいは、もうヤルと決まったことをなそうとしていることを促進、後押しするという具合に使われる言葉です。ヤルと決められたことをプロモーティングするのであって、ヤルかどうかを決めかねていて、その調査や評価のための行動をプロモーティングするとは言わないという訳です。

文法的に、実際として、評価行動をプロモーティングするということは言えるのかも、あるのかもしれませんが、文脈の通り、個人的にはそういうことはないとしたいと考えています。もしかしたら、そういうことには、コンサルティングという言葉が適当かも知れません。

ヤルと決められたこと、今していることを、プロモーティングするということをレッスンの中に取り込んでいこうと思います。昔々、厳冬期登攀や海外登山遠征隊に紛れ込んだもののひとりとして、西堀隊長の言葉にとても共感を抱きながら

石橋を叩けば渡れない

石橋を叩けば渡れない 西堀榮三郎

ということを、どう理解し、どう対応するかなどを、レッスンに含んで参りたいと思うのです。どうもありがとうございました。ではまた。