VとSMARTがあれば、小企業でもPDCAが回る

PDCAというのは、中堅企業や大企業のことであって、小企業や小さな事業には関係のないことと言う人があります。それに、小企業でPDCAが回るなんてことはないと考える人もあるのですが、そう言ったり、考える人自身が小企業以外の人であれば、別に気にすることはありませんが、当事者である小企業の人がそう言ったり、考えたりしているなら、そもそも、何で事業をし始めたのか、どうしてその会社で仕事をするようになったのかから一度思い返してみてください。その時に思っていたこと、望んでいたことを思い返せば、仕事や経営に取り組むのは、会社のためというだけでなく、もともと自分自身のためであったことに改めて気づくことができます。気づくというのは、日ごろ気にしていなかったものを、改めて意識することを言います。意識すれば、考えたり、思うだけでなく、してみる、行うという活動に必ずつながります。やってみて、時に振り返り、より良くしようとする、それがPDCAの流れそのものになります。ここでは、V=ビジョンから捉え直すことが、小企業のPDCAの原動力となり、SMARTに考えて動くことが、PDCAを空理空論でなく、実感できるとても身近な行き方(生き方)であることを記します。

無意識の行動をもっと意識して行うことがPDCA

日頃、誰もが、思いついたことをしてみて、したことを実感することで、次の行動を変えたり変えなかったりしています。何か食べようと思い、たまたま出会った店で食事をしますが、思った以上においしかったとなれば、また、機会をみて、その店へ行こうとしますが、結果が期待値に至らないなら、もうその店に行くことはなくなります。

この日頃の行動を、思い付き(Insprations)、してみる(Do)、感じる(Emotion)、次の行動(Act)と考えて、それらの頭文字をとってIDEAと捉えてみます。すると、下図のように、それらが、そのまま、PDCAのそれぞれのステップと符号します。

PDCAとIDEAの相関図。P:計画、D;行動、C;点検、A;改善という流れは、I:関心、D:試し、E:喜怒哀楽、A:今度はこうするという流れと同じです。

日ごろの行動と比較してみると、PDCAということが、とても当たり前のことを言っていることが良く分かります。同じような思考、行動の流れを持つIDEAPDCAですが、その違いはどこにあるかと良く見てみると、意識しているかどうかの差であることに気づきます。

日ごろの行動を参考にすれば、当然、しようとすることは具体的で、現実的なことですし、やればできるということを前提としています。貨幣経済の世の中なので、お店で何かを買うということになれば、手持ちのおカネがいくらという定量的な判断をしますし、次の約束までの間という時間的な目標もあることでしょう。無意識とは言いながらも、意識していることはある訳ですが、この姿がそのまま、より意識して思考し、行動しようとするPDCAに当てはまります。

SMARTに考えて行う

SMARTというのは、下図のように、Specific(具体的)、Measurable(定量計測)、Attainable(達成可能)、Realistic(現実的)、Timely(期限)の英語頭文字語です。

SMARTという頭文字語は、Specific(具体的)、Measurable(定量計測)、Attainable(達成可能)、Realistic(現実的)、Timely(期限)を意味することを表す画像

PDCAだからといって、ムリな計画や行動を組もうとしたり、点検ばかりに時間を費やすことはムダなことです。ムリとムダが仕事や経営にムラを作ります。この3M(ムリ・ムダ・ムラ)をなくそうとする考え方は、PDCAにおけるSMARTの追求とほぼ同じことを言っています。日常でも、ムリ・ムダ・ムラは、意識するしないに関わらず、誰もが避けようとするものです。ただ、例外があります。人は、自分が成長できる、目指すものに向かっていると感じる時、ムリをムリとも感じずに行動することがあります。他から見ればムリなことであっても、本人にはムリなことではなくなることがある訳です。

望む姿というビジョンがPDCAの目的であり、PDCAを継続させる

何でそんなに切り詰めるのと問われても、自分の想い達成のために貯金を優先する人があります。移動するのがムダと言いながらも、大切な人や家族のためになら、どんなに遠くからでも人は移動してやってきます。他の人には思いもしない厳冬期に雪山を登攀するクライマーもあります。人は自分が好きなこと、求めること、成長できると期待されるものを目指すと、他の人がムリだと思うことをムリとは考えず、必要のために解消される課題と捉えるようになります。

ムリだと思う人は、端からやろうとはしないので、その方法を考えるということはありません。ムリとは捉えていない人だけが、どうするか?どうやろうか?と方法を考えることができます。可能性が高いからそうしようという発想はありません。自分にはそれが必要だから、そのために方法を考え、行動するという考え方です。

PDCAも同様です。目指すものがあやふやだったり、なかったりすれば、PDCA自体始まりようがありません。望む姿、ビジョンというものがあるからこそ、PDCAが有効な手段となります。何を望むのか、それは人が望むということですが、その人とは誰でしょうか?自分だけなのか、他の人もあるのか、そして、自分らが関係を持とうとする人は誰なのか、望む姿を捉え直すことが、PDCAを始める、そして、継続させるビジョンにもっとも肝要となるでしょう。

冒頭の画像の中に「Human oriented company」や「People first」などの言葉があります。人主体ということですが、PDCAにとって大切なことは、人のビジョンにあると捉え、思考し、行動するということが要になる訳です。

フロー領域でのExcelを活用した、ビジョンドリブンPDCAのイメージ図。知情意が整い、決意に至ることで必要性の追求という集中した活動になってくれます。

普段の行動と同じように、ただ、ビジョンを、より意識することで、日常のこととしてPDCAを捉え、思考し、行動することができるようになります。知情意をバラバラな状態から、ひとつに統合できるビジョンを意識できれば、PDCAは仕事、経営というよりは、生き方になるに違いありません。

その実例を、私たちは多くの古人の姿に見ることができます。可能性と問うていませんか?何を望むのか、ビジョンは何かから考え、視点を変えてみるのも考え方のひとつになります。