共感し、共育し、協働するチームが強いのは当たり前

スーツで統一したチームの写真

フローという、無我夢中になって活動する心の領域があって、人は、そのフロー領域内での活動そのものに幸せを感じることを、チクセントミハイ教授がフロー理論として提唱しています。フローに至る条件の要素を分解してみると、それは、ビジョンのような、より高みを目指すための活動であると捉えることができます。

チームメンバーの状態

チームメンバー、例えば、社員は、当然ひとりひとり性格や性質が異なりますが、会社のビジョンを共通の指標とすることで、それぞれの社員の今の状態、今後の望まれる対応方法を考案することができます。フロー理論のフロー領域を示す図に、社員の状態を大雑把に分ける枠組みを重ね合わせてみると以下のような図になります。

社員の状態とフロー領域

フロー領域を、会社やチームのビジョンを目指す際に期待される活動の姿と重なると捉えます。チャレンジ精神が高くても、スキルが不足していれば不安の多い「おなやみ社員」であり、スキルが豊富でもチャレンジ環境が乏しければ、リラックスし過ぎの「くつろぎ社員」と観ることができます。チャレンジもスキルも不十分ということであれば、課題が多い「まだまだ社員」である訳ですが、それぞれがフロー状態で「夢中社員」として働けるように、チャレンジアップ、あるいは、スキルアップが必要と考えれば、そのための環境や意識の変革、チーム内での「共育」のあり方、会社文化、社風の構築など、具体的な行動、実務が見えてくるようになります。より多くの「夢中社員」を育てることが、チーム、そして、個人のビジョンの実現化をより確実にするために必要な対策案件であり、抽象的ではありながらも、何をどういう方向で行うかという道筋を図から導くことができます。

言うだけでなく取り組むことで変化は実現できる

そういう学説があるからとか、それが理想的であるからということを理由にするのでなく、例えば、ヤル気のある組織の中で、また、伸びようと肯定的に物事を捉える上司の元で働いたことのある人であれば、望む姿を目指すという活動が、如何にモチベーションを高めるかを体感しているはずです。その逆に、何事も否定的に捉え、批難ばかりする組織や上司の元にいたことがあれば、如何に、ネガティブな言動が人のヤル気を削ぎ、毎日を暗く陰鬱なものにするかを肌で知っているでしょう。

フロー理論という大層な心理学の学説があるから、もっと頑張れと言うだけでは単なるきれいごとに過ぎません。チーム、あるいは、個人としてそれに取り組むための具体的な仕掛け、環境づくり、実務を作り、それを実際に行い、取り組むということが、最も肝心要なこととなります。

ビジョン実現のチームを作り育てるという発想

ビジョンはチームや会社など組織によって様々ですが、それら一切合切の共通点は何かと考えるなら、それは、人が人と共に、人の幸せを目指す活動というように抽象化できます。自然環境保護や特定分野の技術発展が視野にあるにしても、それは人にとっても良い方向であるという前提があり、人の幸せを広く深くするためのことと言えるはずです。

フロー領域が先広がりの領域として描かれることはとても象徴的です。チャレンジアップやスキルアップというひとつひとつのステップアップが可能性をより広くし、そのためには、より多くの人々との関係性づくりが求められることを暗示するようです。より広い分野、業態、あるいは、新たな価値の創造やセレンディピティとの出会いを想像させます。

人が人と共に、人のために行う、「先広がり」のビジョンには、当然として、仲間同士の「共育」が必要になることは自明のように思われますが、現実として、少なからずの会社では、「共育」どころか「教育」ということに組織的に取り組むということが考えられていないようです。会社や上司が要求するのは社員の自助努力であり、失敗しないことであり、所によっては、出しゃばらないことであったりします。手間の掛からない社員が良い社員であり、気が付く社員を好むという感情は誰もが持つものですが、規模に関わらず、組織のビジョンを個人のビジョンと重ね合わせ、「共育」というしくみを取り入れることで、チームの力がより発揮される余地、伸びしろが多いにあることを示唆しています。