小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を考える

環境の激しい変化

もう知らない人はいないというくらい有名になった「GAFA」(Google, Apple, Facebook, Amazon)の躍進例などが前提になっていると思いますが、今後の企業のあり方について、可能性を指し示しています。

ここでは、まだ、業務上ファックスを多用していたり、社内にIT専属者を持たない小企業が、このDXという新しい言葉をどう捉えたら良いのかについて考えてみます。

DXをもっと分かりやすく自分なりに理解する

経産省の示してくれる、DXの定義に難しい言葉はありませんが、いかんせん、長い文章なので、もっと分かりやすくするため分解して捉え直してみます。

「DX 推進指標」における「DX」の定義

  1. 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、
  2. データとデジタル技術を活用して、
  3. 顧客や社会のニーズを基に、
  4. 製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
  5. 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、
  6. 競争上の優位性を確立すること

こうして、分解したキーワードを使って、図示してみます。

分解、キーワード

  • 事業環境の変化
  • デジタル化
  • 人のニーズ
  • 商品や商売の見直し
  • 自分や自社の見直し
  • もっと儲ける努力
DXとは

こうしてみると、DXとは、事業がもっと良くなるための考え方と方法・道具の提案であることが良く理解できます。

当たり前のことの再認識:デジタルとアナログの統合

経産省「DX 推進指標とそのガイダンス」のエグゼクティブサマリーには3つのポイントがあげられます。

  1. 「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない」
  2. 「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない 」
  3. 「DX による価値創出に向けて、その基盤となる IT システムがどうあるべきか、認識が十分とは言えない 」

ない、ない、ないの連続で、各事業者ができていないことが多いから、環境変化に対応できていないのであり、売上も利益も上がらないことが指摘されています。では、経産省そのものが、できているのか?という疑問を催すところですが、ともかく、その言うところは、今まで通りではうまく行かなくなった事業者や、これから事業を興そうとする人々は傾聴し、意識すべきことであります。

この3つのポイントは、上図との兼ね合いで以下のように捉えられそうです。

  1. 「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない」
    • ギャップ解消の考え方
    • 環境適応
  2. 「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない 」
    • 図の全ての要素
  3. 「DX による価値創出に向けて、その基盤となる IT システムがどうあるべきか、認識が十分とは言えない 」
    • ギャップ解消の方法と道具

「お客さんの気持ちをもっと聞き出せ」とは古くから言われることですが、これまでは属人的なもの、つまり、そういう意識を持ち、行動できる社員個人の力量と成果に依存することが多くありました。それは、お客さんとのコミュニケーションでニーズやウォンツを聞き出し、会社で対応できる改善方法として解釈し、より魅力ある商品や製品として提案することで成果を上げるという一連のフローを理解し、実行できる特定社員の存在や採用が期待されるということです。

ご存じの通り、「GAFA」の成果は政府指導の結果ではなく、各社が現代ICTを活用した成功例のことを言っています。今や、社内にIT専属者がなくとも、十分にICTを活用できるインフラやツールが、無料ないしとても安価なコストで運用できるようになっています。これまで、属人的力量に頼りがちであったコミュニケーションを、それら新しいICTを活用することで、組織的、言い換えれば、誰でもが運用できるしくみとして取り入れていくことが、より良き事業発展へのしくみになり得ることが提案されているということです。

IT専門家のない海外法人が、閉鎖企業資産売却を、1.5年で、時価相当額で成約したり、それまで海外取引経験のない町工場が、米国のある会社から数千万円相当の機械見積依頼と制作可能性の打診を受けたなど、WEBやSNSの可能性と実現例を、単なる例として捉えるのでなく、自社もリーチできる姿であると意識し、企業規模に関わらず、組織的に社内外情報対応する基盤を整えようということです。

小さな会社でも、というより、小さな会社であるが故に、DX推進は、文字通り革新的に進めることができます。オーナー経営者かキーマンの判断だけで推進が始められるからです。人はデジタルではない、アナログの生き物です。人と人との距離や関係が近い小さな組織の方が、デジタル化をアナログの方法でバックアップすることができます。それは、小さな会社にとっては、アナログとデジタルの統合として実現されるのではないでしょうか。アナログと意識や感情の統一があって初めて意味あるデジタル化が可能になるのですから。