Excel活用プロモーティングレッスンは、ユニークな仕事や経営を課題として、個別のExcel活用について相談する教室です。ここでは、ユニークな課題のひとつ、運送会社の請求書作成の例をご紹介します。
ある運送会社の経理担当の方は、月末の請求書作成日が近づくと、間違えないようにと、いつも気が重くなっています。運行管理者が使う運送表から、毎月、請求書を作成しなければなりませんが、Excelを使っているものの、ほとんどが、マニュアルの転記、コピペの繰り返し作業となっていて、単純ではあるものの、とても気の張る作業で、気がの滅入っていました。そういう人のExcel活用を後押しします。
配車シートと請求業務の現状(Excel活用促進教室の教材)
請求業務担当者の上司・先輩にあたる運行管理者は、日々、下図のようなExcelの配車シートを使って運営しています。この明細がひと月、およそ30シート発生します。
ひとつのExcelファイルがひと月の内容となり、日別にシートを分けています。画像は、3日分の簡略例です。また、実際の明細は、もっと大きい表ですが、これも簡略化しています。一か月分、およそ30ワークシートの明細を、得意先ごとに手作業でコピペを繰り返し、請求書作成していますが、いきなり、全明細から請求書を組立てるのはあまりにもシンドイため、確定した明細を日々、コピペを小分けすることで、請求に間に合わせています。
請求先はおよそ20数社、手作業である故に、時には誤りもあり、また、確定したと思っていた配送明細が変更になると、せっかく、小分けしてきた作業を後戻りさせ、修正する必要があります。確かに、気の滅入る作業と言えます。
請求書作成の前提
- 配車シートは、レイアウトなどを変更せずに現状のまま利用する(運行管理者からの指示)
- 得意先ごと、日付順に、配車明細の内容全てを書き出したものを請求書とする(請求先からの要求)
この配車シートは、運行管理者が慣れ親しんだ形であり、また、関係会社も同じ明細を使っているため、配列を変えるなど今の形を変えることができません。
請求書作成の例を作成
上司も一緒になって、もっと大きな視野で業務の内容を打ち合わせることができれば、配車シートから請求書作成というだけでなく、運行管理全体として、別の形で相談することもできそうですが、今回は、あくまで、既存の配車シートから請求明細、請求書作成という仕事の後押しとなります。
請求書作成の集計などを追加した新しいExcelファイル
集計という名前で新しいシートを追加しました。下図のように、それぞれの配車シートの内容を、数式で、1行1レコードに並び替え、ひとつのシートにまとめたものです。実際はもっと大きい行列です。
請求書作成のための集計シート
A列は、請求先となる得意先名の値に、B列の連番をつなげて表示される値です。D列からP列までが、配車シートの内容で、配車シートごと、日付ごとに全ての明細内容を表示させるようにしました。このシートの数式は下図の通りです。
- &を使った文字のつなげ方
- COUNTIF関数
- 異なるシートの参照の仕方
- 絶対参照式
コピペ以外にも、Excelは、いろいろな使い方ができるということを、今の自分の仕事をもっと楽にしてくれるという実感とともに理解するのは楽しいことです。
請求書シート
請求内容の一覧を表示するシートです。
集計シートの内容を、得意先ごと、請求先ごと、日付順に並び替えた表です。
数式は下図のように入力されています。集計シートの値を、VLOOKUP関数で引いているだけの表です。今の実務のためのExcelの使い方として、VLOOKUP関数などを学び、実際に使うことで、操作手順を強く記憶できます。
このデータから、得意先別請求書のひな形に、必要な明細を抽出することで、請求書を仕上げます。
印刷範囲指定しておけば、D列からP列の必要部分だけを、請求一覧として印刷できます。
- VLOOKUP関数
- 印刷範囲指定の仕方
- セルの書式変更の方法
- 文字挿入の方法
請求一覧という明細を組立てるだけで疲れてしまうと、その内容の確認や検証に時間を割けなくなってしまいます。しかし、本来、請求明細は、その中身こそが肝心です。各行の内容が事実の通りなのか、どこか記録に誤りがないかを再確認することこそが、本来の意義となります。明細自体が、ササっと作れるようになれば、その本来の仕事にもっと時間をかけることができるようになります。
Excel活用プロモーティングの意味
Excelの活用の方法を実際の仕事で学ぶことで、Excelを習うと同時に業務を効率化させ、また、生産的な発想を持つ機会を作ることができます。
効率化としての成果
この例では、その都度、請求明細を追加するということに、およそ2週間がかかっていた訳ですが、しくみさえ整えれば、明細の組立て時間は必要なくなります。作業を大きく効率化できたわけですが、日々、転記そのものに気を重くすることがなくなるということは、その他の仕事にもっと意識を集中できるようになるということです。一つの作業の効率化は、その他の仕事の効率化にもつながるはずです。
生産性という視点からの成果
請求書作成、発送という業務は会社として果たされなければならない仕事ですが、請求明細のコピペを早く正しくできる人がその仕事に携わるべきだと考える必要はなくなります。しくみがあれば、誰でも、すぐにできるようになるのですから、極端なことを言えば、上司である運行管理者自身でもできるようになる訳です。
しくみは、既述の通り、Excelで作ることができます。請求書業務に携わっていた人が、これまでの、Excel活用の知見を他にも流用することを考え、請求書だけでなく、乗務員別や発地別売上など、運行管理者や他の職種の人にも有用なシートを作るようになれば、経理だから請求書作成という古きしきたりを越えて、経理も、配車のあり方や管理などに参画できる知識や技能を持てるようになるきっかけになるかもしれません。Excelという道具を活用して、配車担当者も請求書を作成できるようになる、経理も配車の知見を持つ人材として育成される、となり、成果として評価されるようになれば、確実に個人のやりがいも、より強固になることでしょう。
Excelを表計算や表作成のためだけでなく、データベースのように活用することで、効率化、生産性を高めるきっかけを作ることができます。請求書作成というだけでなく、配車表そのものを、どう評価したいなどによって、アナタの今の仕事に便利なしくみをExcelで作り、使う、その後押しをしています。気軽にご連絡下さい。